東京国立博物館で行われている「運慶展」。日本で最も著名な仏師・運慶やその父、子らの作品がずらり。
中には「作られた当時は金箔張りや様々な彩色が施されていたのでは」と思わせる名残が見える像もありました。彩色された状態を想像しながら見るのもおもしろいですね。
アートメイク技術者としては、像の顔が全て左右対称なのが印象的でした。恐ろし気な顔の不動明王なども、怖い顔のままできっちり左右対称。体勢にかなり躍動感を持たせていても、とにかく顔は対称でした。キレイにそろったパーツが、顔の中に左右対称に配置されていました。
すごいのは、高齢に見える顔の像では、それほど左右対称には作られていない事。確かに私たち人間は表情の癖がありますし、物を食べる時どちらの顎をよく使うかなど偏りがあります。それが長年蓄積して来ると、左右差は大きくなるでしょう。口角も少し下がり気味で多少の左右差がつけてある事が像をよりリアルに見せているようです。
髷を結っている像の場合、毛が彫られています。毛はきちんと等間隔で毛の一本一本が平行に美しく並んでいます。彫りの深さも揃っています。マイクロブレーディングや4Dストロークに通じるものを感じました。
アートメイクは美しさを求める化粧であり芸術・アートです。だからこそ、私たち技術者はこのような展示会にも足を運び、美しいものに触れる機会を大切にしてきました。美しいものをたくさん見て「美しさとは何か」を考える、その蓄積が仕事にも生かされてきたのでしょう。